2025-07-03
「~したい」を形にするのが
公務員のしごと<前編>

飯能市職員/片野陽介さん 片野陽介(かたの・ようすけ)30代 埼玉県飯能市農業振興課

「最後まで関われる」のが公務員の魅力
 私が公務員になるきっかけとなった原体験は、大学生のときのインターンシップ&アルバイトです。建設コンサルタントで、住民アンケートの取りまとめや現場の調査といった、自治体から受託した事業の手伝いをしました。 やりがいのある仕事でしたが、コンサルは調査して、提案まではできるものの、その後の実現や効果を計ることまでできません。この「最後まで関われる」ことは自分にとって大切で、それができる地方公務員にしぼって就活をしました。 今の自分を照らしてみると、その「最後まで関わる」に近づき、実現できているのではないかな、と思います。 公務員の仕事は、言われたとおりにやる、そういうものももちろんありますが、自分の「~したい」を形にできる、楽しい仕事です。
「飯能産の農産物の魅力を発信したい」の原点
 私の勤務する埼玉県飯能市は、都心から電車で約1時間の好アクセスながら、面積の約76%を森林が占めている自然に恵まれたまちです。  市ではその恵まれた自然や、自然と共に生きてきた暮らしをテーマとしたエコツーリズムの推進に取り組んでいます。  私が2012年に飯能市に入庁して配属されたのが、そのエコツーリズムを所管するエコツーリズム推進室です。エコツーリズムとは、地域振興、環境保全、観光振興を目的として、地域にある自然、歴史、文化、人の暮らしをテーマとした旅のかたちで、この推進が私の仕事でした。  エコツアーを組むために、ガイドをしていただく地域住民の方と打ち合わせをしたり、ツアー本番でお話を聞くことは、市外出身の自分には新鮮で、地域の魅力を感じました。  エコツアー開催に向けては、農家さんに協力を申し出ることもありました。飯能市は、森林に比べると農地の面積は約2.5%とけっして大きくはありません、しかし、露地野菜を始め、果樹、狭山茶、穀類などの様々な種類の農産物を、様々な農法や想いをもってつくられている方がいらっしゃるのです。  飯能市の農産物の特徴は、農産物の種類や農法、考え方の多様性だと私は感じています。エコツアーを行えば、そうした魅力を外に発信できると考え、話を持ちかけたのですが、農家さんとの関わりを通してわかったのは、農業従事でエコツアーを行うには時間的余裕がないということでした。  飯能の農業の魅力を発信したい思いがある一方、負担をかけることはできません。当時の「どうしたらいいのか」と悩んだことや、農家さんから聞いたたくさんのお話が、今思えば、現在のの活動のベースになったのだと思います。
飯能市内の生産者さんと飲食店のご縁結びをする
 そうこうしているうちに異動になった二つ目の職場が、今の農業のセクションです。  日々、飯能産の農産物の魅力を発信したいと仕事に打ち込んでいたところ、令和2年の1月に地元の飲食店の方から、「飯能産の梨を使ったバーベキューソースをつくりたいので、梨農家さんを紹介してほしい」という相談を受けました。  ちょうど仕事をするなかで知り合った梨農家さんがいたため、飲食店の方を連れて、梨農家の方を訪ねることに。飯能産の梨のバーベキューソースは、数年の時を経て、完成にこぎ着けます。そしてこの訪問がきっかけとなり、私の「農産物の魅力を発信したい」という思いが動き出していきます。 はじめの一歩は、飯能産の農産物の活用について、飯能に移住をしてお店を始められた飲食店の方などにヒアリングをするということです。  この対象の絞り方が功を奏したのか、「移住した飯能が好きなので、飯能産の農産物を使ったメニューを提供したい」という声があがりました。その一方で、元々生まれ育ったまちではないことから、飯能産の農産物の種類や販売場所がわからない、そして生産者の方を訪れるのは勇気がいるという悩みを持つ方がいることも明らかに。  それならばと、私が生産者の方と飲食店の方のマッチングをすることにしました。  その結果、飯能産のシャインマスカットを使ったパフェやさつまいもを使ったベーグルなどが生まれています。 写真:ブルーベリーの収穫体験 (さらに広がっていく片野さんのシゴトを、「後編」でご紹介します。7月22日の更新をお楽しみに!)
片野さんのプロフィール
2012年に飯能市に入庁。2012年から2019年までエコツーリズムセクション(エコツーリズム推進室が2014年度に観光・エコツーリズム推進課に改組) 、2019年からは農業振興課。 公民連携チーム「くるくるはんのう」のメンバーとしても活動する、通称「席にいない公務員」。 趣味:旅行 ストレス解消法:おいしいものを食べる

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