2025-11-18
出会いが導いた
学びと成長の道
松本市職員/田中裕子さん

田中裕子(たなか・ゆうこ) 50代 長野県松本市教育委員会学校給食課

そもそも、栄養士・管理栄養士って?
 みなさんは、栄養士や管理栄養士という職業をご存じでしょうか? どちらも「食と栄養」に関わる資格職ですが、栄養指導を行う対象に違いがあります。管理栄養士は、けがや病気のある人や高齢者など特別な配慮が必要になる人にも栄養指導を行うことができる国家資格職です。  どちらの仕事も、多様な働き先があるのですが、私は、いろいろな縁がつながって、松本市の管理栄養士に応募、採用されて、今に至っています。そんな「ご縁」とシゴトのお話をしていきたいと思います。
人生を変えた「あのシゴト」
 実は松本市職員になる前に、実家のある南木曽町役場(長野県木曽郡)で栄養士の産休代替えとして1年間務めていました。人口4,000人程度のまちでたった一人の栄養士でした。  最初は戸惑いもありましたが、離乳食や幼児食の教室、男性の料理教室に、地域の集会所でお料理教室を開くなど、いろいろなことに挑戦させてもらいました。そうやって、まちの人たちとのふれ合ったことがとても楽しくて、行政の栄養士のお仕事は面白いな、これからもそんな仕事ができたらなと強く思う原体験になりました。  その後、夫の転勤をきっかけに松本市に転居。市の保健センターで嘱託の管理栄養士などをしていたご縁で、正規職員として管理栄養士を募集をしていることを知ることになります。松本市では、十数年ぶりの募集でした。  南木曽町での経験が、やってみたいという思いになって、強く背中を押しました。また嘱託として勤めていた保健センターには、管理栄養士や保健師が15名ほどいたのですが、皆さんにとても良くしていただいて、楽しい職場でした。管理栄養士としては、食のボランティアさんの育成講座や、地元大学の皆さんと調理実習をするなど慣れないことも多かったのですが、その分やりがいも感じていたので、管理栄養士の採用があると聞いたときにはあまり迷わず応募していました。筆記試験と市長・副市長の面接を経て採用されたことで現在に至ります。
いま力を入れている「このシゴト」
 この4月からは学校給食課で、市内に5か所あるうちの1つ、波田学校給食センターのセンター長としてお仕事をしています。管理栄養士として採用されましたが、2020年からは事務職として働いています。(専門職から事務職になることは、自治体の人事ではときどきあるようです。その職の仕事にやりがいをもっていると、任命にショックを受ける人もいます。一方で、専門職ではなれない職層や、広い職域(専門外の職)の仕事に就けるといったポジティブな面もあるので、希望する人もいます)  センター長といっても事務職は私一人なので、施設の修理の契約、給与計算、給食費の計算に食材の支払処理などなどあらゆる事務を全てこなします。そうした事務をこなしつつ、調理員、栄養教諭に、よりよい給食を作ってもらえるように、管理栄養士であることを強みに相談にのったり、食育事業に取り組んだりしています。
わたしのシゴト歴と得た学び
 これまで松本市の職員として、高齢者施設(1年) → 保育課(8年) → 学校給食課(8年)と渡り歩いてきました。管理栄養士の仕事にやりがいを感じつつも、資格職は異動先が一定決まっていることや、同じ部署に長く在籍することも多く、人とのつながりができにくいと感じていました。そんなとき庁内に「対話」をテーマにした自主勉強会が立ち上がったので、積極的に参加するようになりました。  現在は生成AI研究部に参加しています。そうした場でできたつながりが、仕事で困ったときに相談にのってもらうなどの土台になっていて、とてもありがたく思っています。
人生が大きく変わったできごと
 2018年度に、早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会(現在のデモクラシー創造研究所地域経営部会)に松本市の代表として参加したことで大きく人生が変わりました。職員課が派遣研修として応募していたものに、手を挙げました(自治体職員にはこうしたスキルアップのチャンスが用意されているのです)。  この部会は自分の組織課題を見つけ、組織をより良くするための計画を1年かけて考えるという会です。私はこの会でたくさんの出会いと学びを得ながら、松本市がどんなまちになるといいのか、そして何より私はどうしたいのかを考えました。私が考えたたどり着きたい未来は、「子どもたちが生まれてきてよかった」と思える世界をつくることです。  しかし、この未来にたどり着くには、私自身が取り組むだけでは難しいだろうということ、もっと学びをひろげ、仲間をふやそうと考えました。そこで、プライベートで、公務員向けの勉強会を主催・運営するようになりました。
活動はどんどんつながっていく
 その1つが、先ほどの「早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会」から派生した、自治体職員の自主勉強会「スキルアップ講座」です。毎年1回、複数講座を設け、丸一日かけて学び合う会を行っています。部会のOB・OGの中には、マネジメントやコミュニケーションに関する認定資格を持つ人もいます。そうした人を講師に(私も講師を勤めました)講座を組み、今年も10月の末に山梨で盛況に開催されました。  また、「ストレングスファインダー」という、自身の“強み”を知る手法があるのですが、これを学ぶ会や、ライフワークとしてABD(アクティブ・ブック・ダイアローグという未来型読書法)のオンライン講座も行っています。  こうした活動のおかげで全国各地に公務員の仲間ができています。仲間がいることは心強く、そして、このつながりはもちろん仕事にも生かされています。そうした好循環が励みとなって、私自身の学ぶ意欲も高まり、スキルも磨かれています。  ちなみに、認定ファシリテーターになって初めて行ったABDは、同じ学校給食の職場で、食物アレルギーを担当する栄養士4人とでした。食物アレルギーに関する本を題材にしたたのですが、4人の知識レベルが底上げされ、知識が共通化されました。食物アレルギーのあるお子さんの保護者に対して、誰が対応しても適切な基礎知識をもって食物アレルギーの話ができることはとても重要なので、そうした土台作りに自分のスキルが役立ったことも、とてもうれしかった経験です。 写真:今年、山梨で行われた「スキルアップ講座」のご案内
田中さんのプロフィール
2007年に松本市に入庁、2018年から教育委員会学校給食課。アクティブ・ブック・ダイアローグ認定ファシリテーターの資格を持つ。 趣味:イベントを企画すること、人と人をつなげること ストレス解消法:おいしいものを食べること

最新の記事