2025-01-14
市民からの「ありがとう」のために
備前市職員/同前嘉浩さん

同前 嘉浩(どうぜん・よしひろ)40代 岡山県備前市市長公室備前焼振興課 勤務

公務員として働くことの意味
「安定している」「堅実」「定年まで安泰」――。公務員と聞くと、そんなイメージが先行しがちです。もちろん、それは事実です。 しかし一方で、実際の現場では地域社会や組織が抱える問題と課題に苦悩しながら業務にあたっている職員が大勢います。民間企業と同様、あるいはそれ以上に人材や働き手の不足が生じていて、業務は少なくない職場です。残業もありますし、うつ病や早期退職の増加などの問題も多発していて、楽な仕事ではありません。 それでも、「地域のために何かをしたい」「公務員として自分らしい働き方を見つけたい」「そこで挑戦してみたい」という思いがあれば、その気持ちはきっと、地域はもちろん、自分にとっても明るい未来を築くことになるはずです。 幾度と転職を経ているからこそ見える「私なりの視点」 私は工業高校を卒業し、建設会社など6社を経たあと、1市1町で運営する水道事業体へ転職し、公務員となりました。その後、市町村合併によりその水道事業が市に吸収され、備前市の職員となったのです。 民間から水道事業体へ入庁して驚いたのは、仕事の質の違いでした。肉体労働は少なく、成果や結果を求められることもなく、正直「こんなに楽でいいのだろうか」と感じるほどでした。 しかし、次に異動した建設課は、一転、残業が多い職場でした。多くの自治体でも似たような傾向があると思いますが、当時の建設課では「長時間働いている人=仕事のできる人」と考える職員が過半数以上いたのです。その空気に流され、私も2年間は残業続きの日々を過ごすことに…。しかし、仕事のルールがわかり自分の裁量で業務を組み立てられるようになると、効率化して定時で業務を終え、ほかの職員を手伝えるほどの余裕も生まれました。 このように、公務員の働き方は所属部署や上司、構成職員、自身の経験・能力によって大きく変わります。残業が不要な部署もあれば、連日の残業や土日出勤などによりプライベートを犠牲にさせられる部署もあるのです。 こうした公務員の働きかたの特徴は、ポジティブな面と表裏一体でもあります。自分の力で変えていくことができるということだし、熱量を注げる仕事であるということです。なにより、公務員には異動がつきもの。いろいろな部署を渡り歩く中で、多様な経験・知識・スキルを得ることができ、自分の成長を実感します。
特に自分の仕事観が変わった仕事(こんな異動もありました)
技術職として13年が経過した頃、異例の異動で観光課へ配属されたことは私にとって大きな転機でした。観光課では、地域の未来を本気で考え、そのために何をすべきかを考えながら行動している多くの経営者の方々に出会いました。そして、「仕事とは未来を築くために行うもの」だという考え方を学びました。 また、観光課での事務処理は技術畑とは異なる手法で行われており、その違いに触れたことは、「ルールだから守る」という発想を疑う転換点になりました。新事業を立ち上げる際には要綱(ルール)づくりにも携わり、「ルールは作れるし、変えられる」という大きな気づきを得ました。
やりがいや苦悩(捉え方次第で成長の機会になる)
後に下水道課に戻って大規模な整備計画を見直したときには、観光課で学んだ未来志向とルール改善への意識が大いに役立ちました。 既存の計画を単に前例踏襲するのではなく、将来の収益や地域負担を考えて大胆な改革を行ったことで、大きなコスト削減と地域貢献を両立できたのです。また、非効率な業務を洗い出してルールを見直し、デジタル技術の活用で時間削減を実現しました。 公務員は、いまだ前例踏襲で非効率な事業や業務が残っているところもあるのですが、逆に、そうしたことを改善できる「改善ネタ」の宝庫でもあると思っています。だからこそ、そこに気づける若い方が活躍できるチャンスの場も多いのではないでしょうか。 観光課への異動は私にとっての転機でしたが、逆に希望しない異動もあり悩むこともありました。しかし、こうした様々な部署を経験する公務員のキャリアは、新しい視点やスキルを得る良い機会でもあります。積み重ねてきた経験は、業務だけでなく、人生そのものを豊かにする力にもなったと今は感じています。
市民の笑顔が、仕事の意味を教えてくれる
公務員としてのやりがいは、市民の皆さんの声や、地域と長く続く関係性にあります。どんな部署でも前向きに取り組んでいれば「よくやってくれた!」と感謝され、何年経っても「あの時はありがとう!」と言われます。そうした民間ではなかなか得られない、地域との長期的なつながりこそ、公務員の醍醐味です。 もちろん、全てが順調にいくわけではなく、組織内外との調整や制度に対する葛藤は数多くあります。しかし、その壁を乗り越えた先にある「ありがとう」の一言は、公務員として働く意味を改めて実感させてくれます。 また公務員は、よほどの重大な失敗や犯罪を犯さない限り、職を失うことはありません。安定した基盤があるからこそ、大いに挑戦ができるのも公務員の強みです。ぜひ若い皆さんには、この安定を足場ととらえて挑戦を重ね、学びを得ながら素晴らしい人生を歩んでほしいと思います。 そして、公務員となった暁には、ぜひ共に公務員ライフを楽しむ仲間になりましょう!
同前さんのプロフィール
2002年に備前市と日生町で構成する水道事業団に入庁後、市町村合併により備前市の職員になる。2023年から市長公室備前焼振興課。 趣味:スポーツ、YouTube、バイク、料理 ストレス解消法:家族旅行、子供と遊ぶこと、バイク、スポーツ、お酒、ラーメンなど。ちなみに、岡山のラーメンは、豚骨醤油系(醤油のほうが強い)が多いです。 記事作成協力:パブリシンク株式会社

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