各科目(専門)の概要

憲法とは
「憲法」は、国の最高法規であり人権と統治の2つの分野から成り立っています。憲法は国民の幸福追求に必要な人権を保障します。しかし、人権の行使は他者の人権を侵害しない範囲でしか認められません。このことを一般に「人権は公共の福祉によって制約される」と表現します。では、具体的にどの範囲で人権が認められるのか、それを決定するのが統治の役割です。統治とは公権力のことです。国民各人の人権保障という目的のために統治という手段が存在します。
人権と統治の分野がバランスよく出題されます。人権の分野は各人権規定の保障内容と判例の理解が重要です。判例とは裁判所による違憲審査権行使の判断であり、人権制約が公共の福祉の実現に適合しているかを審査したものです。統治の分野は、統治機構である国会、内閣、裁判所の各権能、地方自治制度などの機能を正確に記憶することが重要です。
民法とは
「民法」は、私人間の法律関係を規律した法律で、主に財産関係と家族関係を扱います。人が生まれてから亡くなるまでのすべての場面に関わる法律といえるでしょう。「民法」は大きく財産法と家族法に分類され、財産法は「総則」「物権」「債権」からなり、家族法は「親族法」と「相続法」からなります。条文の数で言いますと1000を超える非常に量の多い法律です。
「民法」は試験範囲が広く、さらに難解であるため多くの受験生を苦しめる科目です。受験勉強の中心を占める科目の1つであることは間違いありません。しかし、民法はその根底にある当事者間の公平という基本原理を押さえ、各規定や判例も必ず理由付けとペアで文章化して記憶する習慣を身に付けるとすぐにマスターできます。常に当事者の視点に立って、利害関係を想像することを心がけましょう。
行政法とは
「行政法」は、公権力たる行政権と国民の関係を規律するルールの総称で、「行政法」という名前の法律自体は存在しません。行政権行使のあり方に関する講学上の理論や行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法などの個別法規などをまとめて「行政法」と呼びます。行政法は行政組織法、行政作用法、行政救済法に分類されます。
「行政法」は「民法」に比べると範囲は狭いのですが、行政法に苦手意識を持つ受験生が多いようです。それは類似した専門用語が非常に多く、混乱を招くことに原因があると思われます。しかし、専門用語に慣れると、その先にある基本原理は憲法に由来するものですから、憲法が理解できていると、同時に行政法の理解も深まるという関係にあります。ですから、常に憲法とのつながりを意識して学習することが重要となります。
ミクロ経済学とは
「ミクロ経済学」は、個々の消費者(家計)や生産者(企業)の行動を分析するもので、ここでは消費者は効用(満足)の最大化を、生産者は利潤の最大化を図ることが前提となっています。次に、消費者や生産者が多数存在する完全競争市場と独占や寡占等の不完全競争市場の両者を比較分析します。さらに、市場が失敗する場合には政府が介入して最適な資源配分を実現することになりますので、こうした政府の役割も分析していくことになります。
各分野ともまず計算問題から解くことを心掛けて下さい。その際にはグラフを書くこともあるかと思いますが、公式を当てはめて解ける問題(例えばP=MC)であれば、理論は無視してでも直ぐに解いて下さい。計算ができるようになれば、それが理論の理解を助けてくれます。各分野の計算問題だけを一通り解いてみて下さい。すると、ミクロ経済学がどのようなものかが見えてきます。そして、計算に慣れてきたなら、今度は何故、この公式なのか考えて下さい。理論の理解に繋がります。
マクロ経済学とは
「マクロ経済学」は、「ミクロ経済学」のように個々の消費者や生産者の行動を分析するものではなく、一国全体の経済をとらえていくものです。一国の消費や投資といったことです。「マクロ経済学」はケインズ経済学を学ぶことです。ケインズ経済学は「不況の経済学」であり、ここでは労働者(非自発的失業者)も資本(機械設備)も使われずに余っている状況が想定されており、したがって需要があればいくらでも生産できることになります。不況のとき、減税や金利の引き下げといった財政金融政策が経済全体にどのような影響を及ぼすかを分析していきます。
ケインズ経済学はまずその全体像を把握して下さい。3つの市場(財・貨幣・労働)のグラフ、次に3つの分析(45度線・IS-LM・AD-AS)のグラフを示せるようにすることが重要です。 そして、これらがどのように関連しているか、また、問題を解いているときどの市場あるいはどの分析なのかを常に意識しなければなりません。
このように体系を把握することと、これとは別に国民所得概念や消費関数や投資関数など、覚えることがベースとなる箇所があり、両者を上手に使い分けていくと効率的に学習することができます。
財政学・経済事情とは
「財政学」は、公共の経済学とも呼ばれており、財政とは国や地方公共団体の経済活動のことを言います。経済活動を行うためには資金が必要であるので国民から税を徴収したり、公債を発行したりすることになります。そして、調達した資金を国防、教育や医療などに支出されます。その収入と支出が厳格になされるように予算が編成され、国会において承認を受けることになります。「経済事情」は、日本をはじめ、世界主要国の経済財政状況が問われます。
「財政学」は、「ミクロ経済学」「マクロ経済学」を学習した後に取り掛かってください。「ミクロ経済学」の論点でもある従量税、従価税、また「マクロ経済学」の論点でもある45度線分析、IS-LM分析は「財政学」でも出題されるからです。また、国家公務員試験では国家予算が出題されます。当該年度の予算と前年度の予算との比較の問題が出題されます。「経済事情」は、国家公務員試験対策では「経済財政白書」からの出題があり、また、その他の試験では「通商白書」からの出題もあります。
政治学とは
「政治学」は、高校の「政治・経済」で扱う「主要国の政治制度」や「選挙制度」、「民主主義の基本原理」などをより詳しい内容にしたものです。議院内閣制や大統領制の特徴、政治過程における有権者、政党、圧力団体との関連、選挙制度、民主主義などの政治思想、政治史について学びます。教養科目では「政治」「日本史」「思想」と関わりが深い科目と言えます。
「政治学」は、「政治過程論」が出題の中心で、政党・圧力団体・選挙・投票行動・議会制の理解が重要になります。次に重要なのは、権力と支配の正当性などの政治権力論です。学者名と学説、著作との関連を問う問題が多いため、基本的な知識の整理が求められます。
行政学とは
「行政学」は、もともと政治学の1分野で、行政のトップ(内閣や大統領)とその下にいる公務員の活動と組織について学ぶ科目です。行政学の特徴は、関連する科目が多いことです。「政策過程」は「政治学」、「地方自治」は教養の「政治」、「組織論(官僚制論)」は「経営学」「社会学」、「行政組織論」は「行政法」と関連があります。
「行政学」は、「行政理論」「組織論(官僚制論)」「行政組織」「行政統制・行政責任」「政策過程」「地方自治」など分野は多岐に渡ります。そのなかでも「地方自治」に関する出題が多く、それゆえ「地方自治」が最も重要です。次に重要なのは、「行政組織」では日本の行政改革、公務員制度、「組織論」ではウェーバーの官僚制論になります。
国際関係とは
「国際関係」は、多様な国際問題を出題内容としていて、得点するには幅広い知識が必要となります。とはいえ、土台となるのは、教養の「政治」「経済」「社会」「日本史」「世界史」の知識です。これら教養科目の学習が「国際関係」の導入になり、また「国際関係」の学習が、これら教養科目の理解を深めます。
「国際関係」は、「国際関係論」「国際機構」「外交安全保障」の3つの分野を分けられます。「国際関係論」は国際関係に関わる理論であり、教養科目との重複がない分野です。「国際機構」は国際連合に関する出題が多いです。「外交安全保障」は、戦後の国際政治史や日本外交史と関わっており、教養の「政治」の国際政治、「日本史」「世界史」の近現代史の知識を活かすことができます。


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